保育観について考えさせられた出来事
子どもたちは、大人のことをよく見ています。
「先生たち、仲悪いのかな」「いつもイライラしてるな」……。
0歳児の赤ちゃんも、その表情や態度から不穏なものを感じ取ります。
10年も前のことですが、保育観について考えさせられたことがありました。
担任が急にお休みしてしまい、お手伝いに行った園でのことです。
夕方の自由遊びの時間、4歳児クラスの男の子が、タイルマットの上からブロックがはみ出さないように気を付けながら遊んでいます。1つでもブロックがマットから出ると、きれいにマットの上に戻しています。
几帳面な子なんだろうな、と思っていましたが、お友達にも「ダメだよ!はみ出しちゃいけないんだよ!」と怒って、強めに腕をつかんでいたので、私は制止しながら「おっと、それは痛いかも。でもちょっとぐらい、マットから出ちゃっても大丈夫なんじゃないかな?」というと、こんなことを言ってきました。
「ダメなんだよ。先生がブロックはこの上だけだって。それとブロックしてるときは、立ったり歩いたりしたら絶対ダメなんだよ。座って遊ばないと怒られちゃうんだから」
え?そうなんだ……。どうやらよく見ると、子どもたちは、とても気を使いながら遊んでいる様子。これって遊びといえるだろうか?
そもそも何故担任はそんなことを言っているんだろう?と疑問に感じたので、後でそれとなく他の先生に聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
「子どもがブロックをあちこちに持っていってしまい、なくなっちゃうんですよね。それに踏んだら危ないし、何より片づけるのが大変だから、って。決まったエリア(マット)からは絶対に出さないで、座って遊ばせるようにと、担任から言われてます」
私はびっくりするとともに、残念な気持ちになりました。
ブロック遊びをするのに、マットから絶対にはみ出してはいけない、立ち上がってはいけない、と細かいルールを課し我慢を強いることが、子どもの遊びや発達にとって、良いことだとは思えないなあ、と感じたのを覚えています。
しかし担当のクラスではなかったので、余計なことは言わないほうがいいだろうと心にそっとしまい込んでしまいました。何より“自分の保育観”について自信がなかったのです。
「もしかしたら私の考えが間違っているのかもしれないし……」
保育観の違いについて考えさせられた出来事でした。
子どもの気持ちや発達のことを考えたら、そうした遊びのルールについて改善するために、その時何か行動すべきだったのかもしれません。保育に正解はない、とよく言いますが、今でもモヤモヤが残っています。
子どもが真ん中?原点に立ち返る
私たち保育士は、子どもの育ちのプロフェッショナルです。
あの保育士やあの園長、あの主任。そして“私自身”も。
子ども、が真ん中になっているかどうか?
子どものこと、置き去りにしていませんか?
まずはそこから振り返ってみましょう。
その上で「やっぱり子どものことを考えると、疑問を感じる。この状況を変えたい」
「このままでは心身に不調をきたしてしまう」
と思ったならば、どうか無理をせずに、周囲の人に相談してみることをおすすめします。
自分一人で抱え込んで、潰れてしまう前に……。
そしてあなたは決して一人ではありません。
多くの保育士が、いろいろなことで悩みながら
子どものためにと毎日前を向いて保育に取り組んでいます。
保育は楽しいもの!そして、乳幼児期の子どもを育てるという尊い仕事です。
(つづく)
このコラムでは、皆さんからのお悩みを広く募集しています。
子どもたちのために働く、同じ仲間の立場から、保育の仕事を楽しく続けるためのヒントについて、ご一緒に考えていきたいと思います♪
次回は「日々の保育の中で“私”はどうしたらいい?」
について具体的に考えてみたいと思います。
※医療的な内容については、専門家にご相談くださいね。
(文:鈴木聖子)