心理学の世界は奥深い。保育業務に役立つ知識もたくさん!今回は「派閥」についての最終回です!
(前回のお話はこちら)。
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そこで、A園長は、B先生に言われたように、
まずは中立的な立場を取っていると思われる職員からヒアリングをすることにしました。
ヒアリングといっても仰々しく取り調べのようなことではなく、雑談の中でさりげなく聞き出すようにしました。
上から目線でもなく、「誰がどうこう言っている」という聞き取りの視点ではなく、
ただ丁寧に丁寧に、一人ひとりの保育への想いや、改善点、解決策のアイディアなどを聞き取るうち、
派閥を形成していると思われる中心人物や
その取り巻きのようなイメージがあった人達にも一人一人に悩みがあり、
保育や園への熱い想いがあることを、改めて確認することができました。
周辺人物から、派閥の中心人物へ、緩やかにヒアリングを続けていき、
ひとりひとりに丁寧に聞き取るうち、
すべての職員が「子どもたちのために、いい保育園をつくりたい」という
同じ思いを持っていることがわかりました。
それなのに、みんなどこか不安で園としての「軸」のようなものがないことを
不安に思っていたのです。
そこでA園長は、みんなの声をとりまとめて
ひとつの冊子(保育の手引き、園のガイドブック、指針となるようなもの)
を作ってみようと、職員会議で提案してみました。
すると、これまで園長に冷ややかな態度をとっていた
複数の職員が「それいいですね」と共感の声をあげてくれたのです。
そこで、あえて派閥同士で対立していると思われるメンバーや、
普段は物静かであまり意見を言わない職員などでプロジェクト委員会をつくり、
1年間をかけて、園のめざす保育の形について話し合い、冊子を作り上げていきました。
1年後、いつのまにか派閥は解消し、皆が心をひとつに前を向いて保育の質を高めていかれる風土が築かれていったのでした。
もちろん、途中、意見が対立したり、なかなか案が受け入れられないなどの場面もありましたが、
その都度、「何のためにそれをやるのか」「どうしたらもっとよくなるだろうか」という原点に都度立ち戻り、
一歩一歩前進していったのでした。
これはあまりにも出来すぎた話のように思われるかもしれませんが、
私自身が体験した、とある認可保育園で実際に起きた出来事です。
派閥が出来あがってしまっている頑なな職場の改革は、一筋縄ではいきません。
かなりのエネルギーを要します。
途中で心折れてしまうこともあるでしょう。
保育士の一斉退職が話題になっていますが、
そういった事態を未然に防ぐためにも、
まずは丁寧に、そして思いやりの心を忘れずに
解決の糸口を探してみましょう。
その糸口さえも見つからないのであれば
もちろん、自分のメンタルがボロボロになるまで我慢し続ける道理はありませんから、
転職して環境をすっかり変えてしまうのも、もちろんありですよ!
自分の選択肢を狭めすぎず、まずはいまあるご自身の職場環境を冷静に俯瞰して、
観察するところから始めてみてはいかがでしょうか。
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このコラムでは、皆さんからのお悩みを広く募集しています。
子どもたちのために働く、同じ仲間の立場から、
保育の仕事を楽しく続けるためのヒントについて、ご一緒に考えていきたいと思います♪
※医療的な内容については、専門家にご相談くださいね。
(文:鈴木聖子)