今年春から、新しい保育園に転職し
「失敗した」と後悔しているA子さんと
「転職してよかった!」と喜んでいるB代さん。
前回に引き続き、B代さんの転職活動のお話です。
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小規模保育所に努めて6年目のB代さん。
0~2歳までのクラス担任を任され、順調にキャリアを積んできたのでした。
昨年度は2歳児クラス担任。
その時初めて「小規模保育所は2歳児までだから、小学校就学前までの子どもたちの成長を見届けることができない。子ども一人ひとりと、家庭的な環境の中で、ゆったりかかわることができるけれど、もっと長期的に子どもとかかわりたい、保育のスキルアップもしてみたい」という想いにかられたのでした。
初めての転職活動に際し、転職エージェントを利用することにし、大手よりも丁寧に対応してくれるエージェントのアドバイザーのもと、自分のキャリアの棚卸をしたことは前回までお話しましたね。
8月のお盆休みも間近な、猛暑のある日。B代さんは、土曜出勤の振替休日を利用して、とある認可保育園に見学に行きました。アドバイザーも同行してくれることになりました。
現在の職場は自転車で行かれる距離ですが、こちらは電車で3駅ほど、ドアtoドアで40分ほどかかります。
0歳~小学校就学前までの120名定員。中規模な保育園です。
運営法人は株式会社ですが、首都圏のあちこちに大小さまざまな保育所を運営している中堅です。
駅から徒歩10分ほどの、閑静な住宅街の中に、真っ白な壁のお洒落な建物が現れました。開園したのはいまから10年ほど前、ちょうど待機児童解消が叫ばれていたピークの頃です。
ドキドキしながらインターホンを押し、見学に来た旨を告げると、50代半ばぐらいの、ふくよかな女性がニコニコしながら玄関のドアを開けてくれました。
「こんにちは!こんなに暑い日に、ようこそおいでくださいました!楽しみにお待ちしていましたよ」
両手を広げて迎え入れてくれました。B代さんは、すぐにこの人が園長だということがわかりました。
「本日はお忙しい中申し訳ございません! 何卒よろしくお願いいたします」
まずは職員室の隣にある、明るい陽射しが差し込む小部屋に通されました。
冷えた麦茶を飲みながら、簡単に自己紹介をします。アドバイザーもフォローしてくれます。
「実はまだB代さんは転職活動を始めたばかりで、まずは見学をさせて頂ければと思い、ご連絡させていただきました」
「こちらは、本当にいつ来ていただいても大丈夫なんです!実は2歳児クラスの担任が一人、妊娠をいたしまして、今年度いっぱいで産休・育休に入ることになったんですね。来年を見越して、年度の途中あるいは来年の4月からでもいいので、どなたか来てくださったらいいなと思って、求人を載せたんですよ」
次に園内を回りながら、各保育室や園庭、給食室など、施設・設備を見学させてもらうことになりました。ちょうど朝の主活動の時間です。
各クラスの子どもたちは、笑顔いっぱい、のびのびと遊んでいます。
そして何より、通り過ぎるたびに職員がみな「こんにちは!」と、大きな声で明るく挨拶してくれることがとても好印象です。子どもたちは園長を見つけると、わらわらと駆け寄ってきて「園長先生、見てみて!」と口々に言いながら、手のひらに握りしめた何かを見せたり、腕に抱きついたり。
園長はそのたびに「すごいね! 〇〇ちゃん、おもしろいね、それ!」とにこやかに返していました。
園内には、子どもたちが作った作品が所狭しと飾られていますが、大人が作ったと思われる壁面制作はありません。
今日は暑さ指数が高いということもあり、園庭で遊んでいる子どもはいませんでしたが、園庭のすみっこにある小さなプールでは、幼児クラスが水遊びを楽しんでいました。
廊下を通って職員室のほうへ戻ろうとしたとき、足に義足を付けている小さな女の子が、一人の職員に支えながら、B代さんに近づいてきました。
「お姉さん、こんにちは!何しに来たの?」B代さんはしゃがんで、女の子の目を見つめながらにこやかに応えました。
「こんにちは!今日は保育園を見にきたんだよ」
するとその子は言いました。
「ここは保育園じゃないの。おうちなの」
B代さんは一瞬心の中で「どういう意味だろう?」と思いましたがすぐに気付いたのでした。「この子にとって、ここはおうちなんだ!」
次回は、B代さんが転職を決めてから現在までのお話です。
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このコラムでは、皆さんからのお悩みを広く募集しています。
子どもたちのために働く、同じ仲間の立場から、
保育の仕事を楽しく続けるためのヒントについて、ご一緒に考えていきたいと思います♪
※医療的な内容については、専門家にご相談くださいね。
(文:鈴木聖子)