今年春から、新しい保育園に転職し
「失敗した」と後悔しているA子さんと
「転職してよかった!」と喜んでいるB代さん。
A子さんのお話のつづきです。
——————————————————–
「みんなを見返してやりたい、早くいいところに決まりたい!」
と焦る気持ちもあり、また忙しい毎日の中で、動ける日が限られていることもあり、
転職エージェントに紹介されたX園とY園に絞って、面接を受けることにしたA子さん。
X園は、自転車で通勤できるところにあります。
Y園は、電車で約1時間。
そもそもA子さんがこの転職エージェントに依頼した理由は、
・保育の求人が他のサイトよりもたくさん掲載されている。
・デザインがキレイでおしゃれ。
・大手だから、絶対変なところは紹介してこないだろう。
という理由でした。
「面接には同行してくれるんですか?」
「いえ、日程調整をしますので、お一人で行っていただきます。結果についてはまたこちらから連絡します」
とのこと。
転職エージェントを利用するのは初めてなので、
ドキドキしましたが、「ご縁がある保育園に決まるだろう」と
運を天に任せる気持ちで動き始めたのでした。
X園につくと、写真で見たより少しこじんまりとした感じ。
定員30名の認可保育園です。
園長が出迎えてくれ、まず園内を見学させてもらい保育方針についての説明を受けました。
園長先生からはあまり質問もなく
「とにかく人が足りなくて」「明日からでも来てほしい」
といいます。切実な様子がうかがえました。しかも
「実は、私は今年度で退職するんですよ。だから、園長は私ではなく違う人になる予定です。まだ決まっていないけれど……」
とのこと。悪くはないけど…うまくいえないけれど…「何か違うかも」という違和感が残りました。
Y園は少し大きな園で定員100名。主任と園長による面接です。
特に問題がなさそうに感じました。昨年新設されたということで、
園舎もきれいで新しく、広くて過ごしやすそうです。
保育室に入ったときに、働いている保育士に笑顔がないのは少し気になりましたが、
条件面も異論ありません。
運営している株式会社も、業界では有名な大手です。
X園で感じた違和感はありません。
「Y園でいいや。少し遠いけれど、将来も安定しそう。よし決めた」
帰り道で、転職エージェントに電話を入れ「Y園を希望したいです」と報告しました。
「わかりました。では先方からのお返事を待ってまた連絡します。X園のほうは辞退でよろしいですか」
「はい、大丈夫です」
それから数日経ちましたが、転職エージェントから連絡がありません。
焦ったA子さんは電話を入れてみました。
「Y園はどうでしたか?決まりましたか?」
「実は、今ご連絡をしようとしていたところなのですが、他にも良い方がいらっしゃって、先にそちらに決まってしまったらしいんです。申し訳ありません。すぐに同条件の園をご紹介いたしますので」
A子さんは愕然としました。「そうか、みんな転職活動をしている時期だから、ライバルもいるんだ。保育士不足だから、すぐ決まるわけじゃないんだ……X園も、断らなきゃよかった……」と後悔しました。
2月も終わりに近づいてきました。
あと1か月しかありません。A子さんの焦りと不安は大きくなり
「とにかくどこでもいい!決まりたい!」という気持ちでいっぱいになりました。
それから3日ほど待たされたあと、転職エージェントから連絡があり、もう一つ同条件の園がある、とのことで、A子さんは飛びつきました。
すぐに面接と見学の日程調整をしてもらい、現職の保育園は「体調不良」を理由にお休みを申し入れ、平日の日中に出かけていきました。しかし、面接後、僅差で他の人に決まったという連絡がありました。
もうとにかくどこでもいい、決まりたい!
条件や見学などよりも、「早く転職先を決めて、『やめる』って言いたい!」という気持ちだけで占められていきました。
そうこうするうちに、現職の保育園では、次年度のクラス発表と準備なども始まり、A子さんは
“辞めたいのに次が決まっていないから、退職を申し出られない状況”
に追い込まれていきました。
そしてついに3月中旬、Z保育園という定員60名の中規模認可保育園から、内定をもらうことに成功しました。現職の保育園の休業規則では、「1か月前までに退職を申し出る」と定められていますが、もうしかたありません。
現職の保育園に退職届を提出しました。園長からはとにかく引き留められ、「こんなに急に言われても困る」と散々小言を言われました。
同僚からも「A子先生のせいで、来年度のクラス編成はやり直しになった」と冷たい目で見られるようになりました。
でも、そんなことはどうでもいいことでした。
「やっと辞められる!みんな、頑張ってね、私みたいに転職すればいいのに」という勝ち誇った気持ちでいっぱいです。残りの2週間は有給を消化して休むことにしました。
さあ、気持ちを切り替えよう。
新しい保育エプロンでも買いにいこうかな……。
舞い上がっていました。
しかし、4月からもっと悩むことになろうとは、このときのA子さんはまだ知る由もありませんでした。
次回は、転職後のA子さん、後悔の日々についてのレポートをお届けします。
このコラムでは、皆さんからのお悩みを広く募集しています。
子どもたちのために働く、同じ仲間の立場から、
保育の仕事を楽しく続けるためのヒントについて、ご一緒に考えていきたいと思います♪
※医療的な内容については、専門家にご相談くださいね。
(文:鈴木聖子)