きのねの保育理念は「生きる力をはぐくむ」ですが、さて「生きる力」ってなんでしょう?
我々の考える、生きる力のうちの一つが、「『いま』を楽しむことができる」です。
こどもにとって遊びは、自分自身の「いま」を表現すること。「いま、そこの水たまりで遊びたい」「いま、そこに咲いてるお花を摘みたい」「いま、ふと目に止まったおもちゃのブロックで、なにか作りたい」「いま、お腹が空いてる、すぐに何か食べたい」……いま、いま、いまの連続。
その、「いま」を生きている子どもに「でも今さ、朝の会の時間だよ」と席に着くよう促し、特に年長さんに、つい「座ってられないと、小学校で困るよ」とか言ってしまう。
一般的には、小学校で困らないよう、座る練習・話を聞く練習をするらしい。でも、そんなことは、いまを生きてるこどもたちは知ったことではありません。
だから、いまのためにいまやること、それだけ声をかけましょう。座った方が牛乳飲みやすいし、静かにしてた方がお名前呼ばれた時すぐわかるし、自分の話は聞いて欲しい(=友達の話も聞きましょう)でしょ、だから、座って静かにするんだし。
すべて「いま、この時のため」。それを積み重ねていけば、小学校行く頃には、ちゃんと座って見て聞いて、時間割通りに動けるようになる。個人差はありますが。
こんな小さい園でも、ひとりひとり違うから、自分勝手にできない集団生活。ぶつかったりケンカしたりの連続。それでも、いまこのメンバーで、同じ場所にいるいま、どうしようか、いま何をして楽しく過ごそうか……その積み重ねが未来を作っているのです。
決して、未来の準備のために今を過ごしているのではなく
いま、このときのために。
大人の私たちは、たくさん経験してきたから知ってます。隣の席の子がいい子なのに、うまくいかなかったこともあったし、いい子なのに、その良さに気付けないこともあった。
ガッカリしてメソメソしたくなること、たくさんあるの知ってます。辛い時はいつだってそばにいてくれる、そんなともだちが必ずできるのか…最初は仲良くできたのに、近づき過ぎて気まずくなったこともあった。
だからね、子どもたちも、多分いっぱい、失敗すると思うんです。それ知ってるから、ハラハラしてしまうし、体も心もケガをしたらかわいそうだから、ついアレコレ言っちゃうんです。
転ばないようにね、走っちゃダメ、約束守らなきゃダメ、鼻をかまなきゃダメ、喧嘩したあとちゃんとゴメンね言わなきゃダメ…ちょっと大きくなるとね、早く寝なさい起きなさい、持ち物は前の晩に揃えて、勉強遅れちゃうから宿題やって…あれやっちゃダメ、それやっちゃダメ…
病気で辛そうな時、「代わってあげたい(;ω;)」って、親なら思って当然です。でも、からだの怪我はもちろん、心のケガ、乗り越えるべき試練は、その子どものもの。代わってあげることはできません。
子ども時代は、未熟ゆえ上手くいかない時代。失敗してもいい時代。取り返しのつかない失敗なんて、そうそうありません。失敗させてあげましょう。
子どもの力では解決できないことができたら、初めて親の出番です。それまでの経緯も知っておきつつ、恩を着せることもせず、味方になってあげましょう。
「だから言ったでしょ」って言いたくなるのを我慢して。

髙澤 佳栄(Takasawa Yoshie)
保育園きのね 園長