保育士のメンタルに効くプチコラム「ぶるーむサプリ」です。
保育に役立つ心理学の新シーズン3回目は、「社会的手抜き」です。
あなたの職場はいかがでしょうか?
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社会的手抜きとは、何かの作業を集団で行うときに、「個人が自分の力を発揮しなくなる」という心理現象をいいます。集団になると個人のパフォーマンスが下がり、場合によってはサボってしまう状態です。
リンゲルマン効果(集団で作業を行うと、個人で作業を行うよりも成果が下がる現象)、フリーライダー現象(集団で作業を行うとき他のメンバーに頼ってしまう現象)、社会的怠惰(集団での作業になると個人が努力を怠る現象)なども関連する概念です。
「みんなでやることだから、自分だけ手抜きしても大丈夫だろう」とか「誰かがやってくれるだろう」といった心理が働いてしまい、結果的に集団全体での成果や生産性が低下してしまうのです。
何故このようなことが起こるのでしょうか。
集団で何かに取り組む場合、個々人の負担は少なくなりますが、反対に自分の努力が、個人では評価されるわけではない、ということがあります。
例えば、保育園ではどんなことが考えられるでしょうか。
年間行事といえば運動会。
もちろん各行事の係はいますが、クラスの出し物はもちろん、たくさんの準備が必要です。クラスごとに役割分担し、皆で力を合わせて頑張ろうと、準備に力も入ります。
しかし中には、「あの先生たちが頑張ってくれているから、私はそこまでやることないかな」「行事って正直面倒くさいな。係じゃないんだから、余計な動きはしないでおこう」など、モチベーションが低い職員もいます。
そのうちに勤務時間内だけでなく、少し残業してでも積極的に準備にかかわろうとする人、何もやらない人と、作業量に格差が出てきて、頑張っているメンバーからは「あの先生は何もやらない。ずるい」といった不満も出てくるようになります。
せっかくチームでよいものを作り上げ、園の団結力を高める良い機会でもあるのに、行事の後に人間関係が悪くなる、なんてこともあります。
こうした社会的手抜きは、プロのスポーツでも見られる現象で、集団であればどこにでも起こってしまう可能性のある心理現象。
このネガティブな状況を防止するには、まず個人への役割分担を明確にすること、個人の貢献度や作業量に応じて評価する基準を作っておく、チーム全体で作っていくという機運をつくることが重要です。
みんなが同じテンションになるのはなかなか難しいことです。やる気やモチベーション、温度感が違うのは仕方がないこと。
得意なことを得意な人にやってもらったり、プロセスや達成度を見える化・可視化する(例えば事務室や休憩室に、役割分担表や、進捗グラフのようなわかりやすい掲示物を張っておく)のも効果があります。
「頑張っている人がいつも損をする」などというチームにならないよう、コミュニケーションにひと手間かけて、情報共有の風通しを良くしていきたいものですね。
次回も保育に役立つ心理学用語をお届けします。お楽しみに!
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このコラムでは、皆さんからのお悩みを広く募集しています。
子どもたちのために働く、同じ仲間の立場から、
保育の仕事を楽しく続けるためのヒントについて、ご一緒に考えていきたいと思います♪
※医療的な内容については、専門家にご相談くださいね。
(文:鈴木聖子)