心理学の世界は奥深い。保育業務に役立つ知識もたくさん!
今回も前回に引き続き、「自己奉仕バイアス」についてとり上げます。
——————————————————–
夏祭り終了後に、保護者からの「ご意見」があがり、
A先生もB先生もとても落ち込みました。
反省・振り返りのミーティングを前に、
園長先生が、二人それぞれに声をかけました。
「あまり気にすることないよ。でもね、きっと何か原因があったと思うのよね。二人はママの意見を聞いてどう思った? ミーティングまでに原因と今後の改善点について考えてみてね」。
先輩の“ちょっと強め”のA先生はこう思いました。
「もうほんとに頭にくる。せっかく頑張ったのにクレームが入るなんて。やっぱりね、だから私がB先生に言ったのに。ルールをきちんと決めて、どの子が輪投げをやったのか、チェックしないからこういうことになったんだよね。やっぱりあの子は経験がないからね(私が輪投げコーナーの担当だったらそんなことは起こらなかった。なぜなら私はB先生より経験が豊富だから)」
一方、後輩で経験値が少ないB先生は、こう思いました。
「ああ、どうしよう。A先生はきっと、私のせいにしているだろうな。確かに、輪投げ遊びのコーナーは私の担当だった。でもほかの役割もやらなければならなかったから、ずっと輪投げコーナーに張り付いていられなかったし、仕方がなかったんだ。私は自分ができることはちゃんとやっていたけど、そもそもA先生が怖くて、意見を言わせてもらえないこともあったし。私のせいではなく、A先生とペアを組ませた園長先生も、どうかと思う」
ミーティング当日は、二人とも、園長先生に意見を求められましたが、うまく答えられませんでした。二人が内心考えていることを見抜いていた園長先生は言いました。
「子どもの動きの細かいところまで、シミュレーションできていればよかったよね。でも準備に時間がかかって、なかなか想定外のことまで頭が回らなかったと思う。来年からはどの子も公平に体験できるように、1回やったらカードにハンコを押すか、シールを貼ってスタンプラリーみたいにするのもいいね。原則は一人1回にして、1回もやっていない子を優先的に並ばせるとかね」
「A先生は経験があるからこそ、もう少し細かいところまで再度動きをチェックして、シミュレーションできたと思うし、B先生はわからないことや心配なことは、周囲の先生たちにどんどん聞いていこうね。心の中だけで思っていても伝わらないし、『目的は何なのか』という原点に返って、保育も組み立てていきましょう。そのうえで『自分はベストを尽くしたか』ということを、もう一度考えてみてね」
人のせいにしていたけれど、自分はどうだったんだろう。
園長先生の話を聞き、二人は反省しました。
以上は端的な事例ですが、
自分が成功したときは、自分の能力が高いと認識し、反対に失敗したときは相手や環境のせいにしてしまう「自己奉仕バイアス」というものを、誰しもが持っているんだということを知るだけでも、「自分の考えは偏っていないか、思い込んでいないかな」と、一歩立ち止まって考えるきっかけとなり、相手に敬意を払いながらコミュニケーションしていくことができるのではないでしょうか。
ぜひみなさんも、自分自身のことに置き換えて考えてみてくださいね。
———————————————————–
このコラムでは、皆さんからのお悩みを広く募集しています。
子どもたちのために働く、同じ仲間の立場から、
保育の仕事を楽しく続けるためのヒントについて、ご一緒に考えていきたいと思います♪
(文:鈴木聖子)